作品紹介
「Midnight in Paris」は2011年のアメリカ映画で、2011年のアカデミー賞脚本賞を受賞。ウディ・アレンの世界観にひたることのできる作品です。
主役のアメリカ人、ギル・ペンダーが夜中の12時にクラシックカーに乗り込んで1920年代のパリにタイムスリップする話です。ギルはフィアンセの両親とともにパリを旅行中。
全編にわたって歴史のある建物や石畳のあるパリの街並みが映し出され、美しい映像が映画を盛り上げています。特にオープニングでは「Si tu vois ma mére」(英訳するとIf you see my mother.)というジャスの曲が流れる中、雨の日や夕方、夜といった季節・天気・時間帯も様々な名所がたくさん登場し、いろいろな表情のパリが楽しめます。
ギルは小説家志望で初の小説を執筆中。映画の脚本家をしながら、冒険しない人生を送ってきました。憧れの作家や芸術家たちが活躍していた1920年代は、ギルにとっての黄金時代。
毎晩1920年代に行き、ヘミングウェイやピカソといった自身のアイドルたちと出会います。彼らに自身の小説を批評してもらい、本当にやりたいことを見つけるギル。
見ただけでパリ旅行に行ったような気持ちになれますが、旅行でなくパリに住んでみたくなる映画です。
監督・キャスト紹介
監督・脚本のウディ・アレン(Woody Allen) は、1977年の映画「アニー・ホール」でアカデミー賞監督賞を受賞しています。
キャスト
役名 | 俳優 | 主な出演作 |
ギル・ペンダー Gil Pender | オーウェン・ウィルソン Owen Wilson | ワンダー君は太陽 |
イネズ Inez | レイチェル・マクアダムス Rachel McAdams | 君に読む物語 スポットライト |
アドリアナ Adriana | マリオン・コティヤール Marion Cotillard | エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜 (アカデミー賞主演女優賞受賞) |
ガートルード・スタイン | キャシー・ベイツ | ミザリー |
セリフ紹介
ベルサイユ宮殿にて
ギルの小説に出てくるノスタルジーショップで古いものを買うのはどんな人かという話になり、イネズが友人のポールに答えたセリフ
過去に生きている人
古い時代に生きていたら、もっと幸せな生活ができただろうと思っている人よ
past:過去
earlier time:早い時期・・・ここでは「古い時代」と訳しています
ギルの小説の主人公であるノスタルジーショップで働く男についての説明です。
ギルは古い時代(1920年代)が好きですが、イネズには過去に憧れなどなさそう…。
これに対し、ポールは
ノスタルジアは否定の心理
苦痛に満ちた現在を否定することだ
nostalgia: 郷愁、ノスタルジア
denial: 拒絶、拒否
painful: 痛みのある、苦しい、つらい
present: 現在の
ポールもノスタルジーショップをよく思わないようで、イネズとポールは気があっています。ギルの周りには、彼の小説で描かれる世界(過去・古い時代)について共感してくれる人がいません。
さらに会話は続きます
ポール:この間違った考え方は名付けて「黄金時代」思考と呼ばれる。
イネズ:その通りよ
ポール:今生きている時代と異なる時代の方が良いという、間違った概念だ。
憂鬱な気持ちにうまく対処できない人たちが、ロマンチックに過去を想像することの欠点だ。
fallacy:誤信、誤った考え
touche:まさにその通り
erroneous:間違った、誤った
notion:概念
flaw: 欠点、欠陥
cope with: 〜にうまく対処する
depressive: うつ状態の人
現在に不満があるからと言って過去にロマンを求めるのは間違いだということです。「touche」はもともとフェンシング用語の「突き」から来ていて「一本取られた」と言ったような意味があります
ヘミングウェイとカフェで
ヘミングウェイ:ノスタルジアショップってなんなんだ?
ギル:古い物-思い出の品物を売る店です。よくないかな…?
ヘミングウェイ:真実の話ならひどい題材なんかない。散文が純粋によく出来ていて、重圧に負けず洗練と勇気を肯定していれば
what the hell is 〜:〜は一体何なんだ?
memorabilia:記念品、思い出の品物
subject: 主題、題目
terrible: ひどい、恐ろしい
prose: 散文、口語、日常語
affirm: 肯定する、確認する
grace: 優雅、礼儀、洗練、美点
courage: 勇気
pressure: 圧すること、圧迫、困難
ヘミングウェイは、小説で大事なのは題材ではなく書き方だと言っています。ノスタルジアショップを否定されていたギルは、やっと肯定してくれる人に出会えました。
ギルの小説を読む前から嫌いだというヘミングウェイの理由
もし駄作なら、下手な文は嫌いだからダメ
傑作なら嫉妬でますます嫌いになるだろう
bad: 悪い、粗悪な・・・ここでは、小説についてのコメントなのでbadを駄作と訳しています
hate: 憎む、嫌う
writing:書くこと、執筆
envious: 嫉妬深い、ねたんで
all the more: ますます、なおさら
ヘミングウェイは他の人の小説は良くても悪くても嫌いのようです。
ギルが自分のことをヘミングウェイの競争相手になれるほどの小説家ではないと言った時のヘミングウェイのセリフ
作家なら自分が一番だと宣言しろ!
だがお前は違う、俺がいる限りはな
declare: 宣言する、言い切る
as long as〜: 〜する限りは
ポイント
ヘミングウェイは自分の小説が一番だと自信にあふれています。
ギルの小説の冒頭を聞いた時のアドリアナのセリフ
好き
惹きつけられたわ!
ピッタリとね。
be hooked (on):に夢中になる、病みつきになる
フックに引っかかっている様子をイメージすると分かりやすいかと思います。
アドリアナはフランス人なので、自分の英語が合っているか確認する意味で2回目の「Hooked!」を言ったのではないかと思われます。
その後、ギルがアドリアナに話しかけます。
ギル:本当に小説の出だし良かった?
アドリアナ:だって過去はずっと私にとってのカリスマだったのよ
アドリアナも過去に憧れがあるのでギルと同じです。カリスマの綴りは初めてみました。
遊園地でギルがアドリアナに偶然出会った時のセリフ
偶然だね
fluke: 幸運、まぐれ当り
Flukeはビリヤード用語のフロック(まぐれ当り)から来ています。「a pleasant surprise」と同じような意味です。
アドリアナとセーヌ川沿いを散歩している時のセリフ
アドリアナ:パリの昼と夜、どっちの方がより美しいかなんて絶対に決められないわ
ギル:そりゃ無理だよ。選べないさ。
っていうのは、どっちにしてもそうじゃない完璧な理由が思いつく。
pick: 選ぶ
checkmate: 王手つみ、チェックメート
argument: 議論
チェスでチェックメイトされると、キングが取られ負けが確定した状況です。
ここでは昼が美しいと言っても夜が美しいと言っても、それを覆す完璧な反論があるということ。
アドリアナとベルエポックの時代に行った時のギルのセリフ
君が自分の時代から逃げようとしたように、僕も自分の時代から逃げようとしてたんだ。黄金の時代へと。
escape: 逃げる、逃避する
present: 現在
golden age: 黄金時代
ギルにとっての黄金時代は1920年代ですが、アドリアナにとっての黄金時代はベルエポック。違う時代に生きていても、同じようなことを考えているものです。
アドリアナ、もしここに残ってこの時代が自分の現在になったら、すぐに他の時代が本当の黄金時代だと想像し始めることになる。
今ってそういうことなんだ。
満足できない部分があるものだ。
人生は少し物足りないのだから。
pretty soon: すぐに
unsatisfying: 不満足な
どの時代に行っても他の時代に憧れてしまうことになるのなら、現在の生活の不満を少しでも解消できるようにしたいものです。
まとめ
同じ時代を生きていても、一般人が有名人に出会うことはほぼありません。そんな中で、異国の地でタイムスリップしただけでなく、歴史上の偉大な人たちに出会うギル。冒険せずに暮らして来た今の生活、婚約者との関係を見直します。もし私がタイムスリップできたら、昔の街並みや建物を観光するだけでも楽しそうですが、そのほかに当時の普通の人の暮らしを体験してみたいなと思います。劇中で話される英語はスピードが速く、難しい単語も多いので英語の難易度的には高いと思います。
最後にオリジナルの予告編をどうぞ
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