Moneyball

作品紹介 

マネーボールは2011年のアメリカ映画。アカデミー賞の作品賞・主演男優賞(ブラッド・ピット)・助演男優賞(ジョナ・ヒル)を含む6部門にノミネートされました。 

ジャンルは伝記映画でアメリカン・リーグの野球チーム、オークランド・アスレチックスのGMを務めるビリー・ビーンを描いています。アスレチックスでは、チームの主力選手が他の裕福な球団に引き抜かれても、代わりになる選手を補充するだけの予算がありません。ヤンキースのように高い年俸を選手に払えない中、過小評価されている選手を見つけて低予算でも勝てるチームを作ろうと奮闘する映画です。

監督・脚本・キャスト

監督:ベネット・ミラー(主な作品は2005年のカポーティ)
脚本:スティーブン・ザイリアンが書いた後にアーロン・ソーキンが改稿。

キャスト 
ブラッド・ピット:ビリー・ビーン役
ジョナ・ヒル:ピーター・ブランド役
フィリップ・シーモア・ホフマン:アート・ハウイー役(監督)

セリフ紹介 

It’s a tough one to swallow.

2001年アメリカン・リーグの地区優勝戦でヤンキースに負けた後、球団オーナーとビリーの会話。 

Owner:How are the guys doing? 
オーナー:チームのみんなはどうしてる? 

Billy: That was a killer. That was a killer. 
ビリー:傷は深い。参ってるよ。 

It’s a tough one to swallow
なかなか立ち直れない。 

tough one to swallowで「飲み込むのが難しい→なかなか立ち直れない」
That was a killer.を2回繰り返すビリー。字幕ではビリーのセリフをまとめて「みんな 相当ヘコんでいます」にしています。 

killer:致命的な、すごい 
tough:むずかしい、困難な 
swallow:飲み込む 

My bar is here.

地区優勝戦に出られても、そこで負けてしまっては意味がないと思っているビリーのセリフです。

Billy: My bar is here. 
俺の目標はここだ。 

My bar is to take this team to the championship. 
このチームで優勝することだ。 

bar: バー、目標 
championship:選手権、優勝、決勝戦 

最初の文は、手を高い位置に置くジェスチャーをしながら話しています。目標点は高く、地区優勝戦で敗れたので到達できていません。次の文のtake this team to the championshipは、地区で優勝してワールドシリーズに出場することとも、ワールドシリーズで優勝することともとれますが、目標は高いのでワールドシリーズでの優勝を指していると思います。 

My bar =to以下 目標はto以下の部分です。第2文型のSVC(主語・動詞・補語)になっています。

You played me.

選手のエージェント電話しているビリーセリフ。

Billy: You played me. 
ビリー:だましたな。       

Agent: I’m just doing my job for my client. 
エージェント:クライアントのために仕事をしているだけだ。 

Playには「だます」と言った意味もあります。 

エージェントと来季の年俸の話はついていました。しかし他球団がもっと高い金額を提示したため、選手が移籍してしまうことになりだました(played)と言っています。 

エージェントはスポーツ選手と球団の間に入って契約の交渉をします。私はエージェントの仕事をトム・クルーズ主演の映画「ザ・エージェント」(原題Jerry Maguire)を見るまで知りませんでした。映画公開後は日本でもエージェントの存在が浸透したように思います。セリフ「Show me the money.」は何年経っても忘れません。

We’ve been gutted.

来季のための会議での会話

The problem we’re trying to solve is that there are rich teams…and there are poor teams, then there’s 50 feet of crap… and then there’s us. 
我々が解決しようとしている問題は、金持ち球団があって貧乏球団がある…そして15メートルぐらいのクソがあって…うちの球団だ。 

It’s an unfair game. 
不公平な戦いだ。 

And now we’ve been gutted. 

それに内臓を取られた。 

Organ donors for the rich. 
うちは金持ちに臓器提供してやってるみたいなもんだよ。 

crap:クソ 
gut:はらわたを抜く、内臓を取る 
organ donor:臓器提供者 

1フィートは0.3048メートルです。アスレチックスは貧乏球団よりもさらに下に位置していると言っています。内臓の話は主力の選手が他球団に引き抜かれて、戦力がなくなってしまったことに対する比喩です。 選手を引き止めるだけの資金がない中で、どうやって戦うのか…。

In order to buy wins you need to buy runs.

ビリーはインディアンズとのGMと選手を引き抜く交渉をするも決裂、同席していたピーターに興味を持ちます。インディアンズのGMがピーターの助言を聞き入れていたからです。

ピーターに話しかけると、席では話しづらそうだったので駐車場に移動して話を聞くことに。

ピーターは野球界の考え方は古いとの持論を展開。

People who run ball clubs, they think in terms of buying players. 
球団の経営者たちは、選手を買うことを考える 

Your goal shouldn’t be to buy players. 
選手を買うことをゴールにすべきじゃない 

Your goal should be to buy wins, in order to buy wins you need to buy runs
勝利を買うことをゴールにすべきであって、得点を買う必要があるんだ。 

ball club:球団
In terms of〜:〜に関して  

最初の文のrunは「経営する」で「run a business」などと使います。
最後の文のrunは「野球で得点すること」です。Cambridge dictionaryでは「(in baseball) a single point, scored by touching each of the four bases(=positions on a square) in the correct order.」 意味は「(野球で)4つのベース(四角に配置された)を正しい順番で触れることで得られる1得点。」説明くさいです。考えてみたら2ランホームランとかいうのもここから来ているのだなと思いました。野球に詳しい人には当たり前のことでしょうが…。  

Pack your bags, Pete.

ピートに電話してビリーをインディアンズから引き抜いたことを伝えるビリーのセリフです。

Pack your bags, Pete. 
ピート、荷物をまとめろ。 

I just bought you from the Cleveland Indians. 
インディアンズからお前を買った。 

2つ目の文は「I’ve just bought〜」という現在完了形のhaveが省略されています。 
選手だけでなく、社員も簡単に引き抜くことができるのにはビックリです。 ビリーの言葉は前置きがなく、急に始まります。

Many are called, few are chosen.

ビリーの選手時代:アナウンサーのコメントです。 

And things don’t pan out, you move on. 
うまくいかなかったら、去ることになる。 

That’s baseball. 
それが野球だ 

Many are called, few are chosen. 
多く集まるが、ほとんど残らない。 

pan out: うまくいく、成功する 
move on:現在いる場所を離れて別の場所に行く 

最後の文は直訳すると「多くの人が呼ばれるが、選ばれる人はほとんどいない」です。 
プロ野球選手になるまでも大変ですが、なってからはもっと大変な世界に身を置くことに。何年も残って活躍できる選手はごくわずかです。スポーツは選手が大変な状況の中で頑張っているから、感動するのだと思います。 

Adapt or die.

統計で選手を集めるやり方に不満なスカウトマンに対するビリーのセリフで、新しいやり方について来れないスカウトマンには辞めてもらうしかない…と考えています。

Adapt or die. (イヤなら辞めろ) 

adapt:適応する 
or〜:さもないと〜 

dieは「死ね」というわけではなくquit(やめる)ということです。
例文)Do or die.死ぬ覚悟でやる。やるかやられるか。 

I’ll give you a nickel’s worth of free advice. 

統計で選手を集めるやり方に不満なスカウトマンのグラディが、ビリーに言ったセリフです。 

And I’ll give you a nickel’s worth of free advice.
じゃあ役に立つアドバイスをしてやろう。 

nickelは5セント硬貨のことです。直訳すると「5セントの価値がある無料アドバイスをしてやろう」です。 

新しいことを始めようとすると反対する人はどこの世界でもいるものです。ビリーのように失敗した場合は自分のせいになり、自分の意見が通る立場なら思った道を進むしかありません。責任は重いですが、成功したときの喜びもひとしおでやりがいのある仕事なので羨ましいなと思います。 

When you get the answer you’re looking for, hang up. 

他球団との交渉の電話で…相手が何か話そうとしていても電話を切ってしまうビリーのセリフ。

When you get the answer you’re looking for, hang up
欲しい言葉が聞けたら切れ。 

hang up:(電話を)切る 
直訳すると「探している答えを得たら切れ」です。 

ちなみに電話を保留にするときは「hold on」で「お待ちください」です。pleaseも前後のどちらかにつけるといいでしょう。話し続けていたら相手の気が変わってしまうかもしれません。失礼にならない程度に早めに切るのは、ビジネスで役に立つ考え方です。

I’m paying you for the player you are right now.

ヤンキースからトレードでアスレチックスに来た選手に対するセリフで、ビリーは年俸の半分をヤンキースが払っていることを明かします。 

I’m not paying you for the player you used to be. 
過去のプレーに給料を払っているんじゃない。 

I’m paying you for the player you are right now. 
今のプレーに払っているんだ。 

ヤンキースは過去に活躍してくれたことに対して年俸を半分負担しているのでしょう。半額負担してでもチームから出て欲しいと思われるのは選手にとって切ない限りです。 

pay:(給料などを)支払う 
used to~:(以前は)〜であった 

When your enemy’s making mistakes, don’t interrupt him. 

ビリーが選手たちに教える勝つための理論① 
相手チームがバントをしようとしていたらアウトを1つ取れるからラッキー、確実にアウトをとれと教えます。2塁に投げてアウトにできたら敵のバントは失敗ですが、2塁は気にせずに1塁をアウトにすればいいという理論。  

Billy:When your enemy’s making mistakes, don’t interrupt him
敵が間違いをおかそうとしていたら、邪魔するな  

make a mistake:(一つの)間違いをおかす 
interrupt~:〜の邪魔をする 

I hate losing more than I even wanna win. 

ビリーが選手たちに教える勝つための理論②

I hate losing more than I even wanna win. 
勝ちたいよりも負けたくない気持ちが強い。 

hate ~ingは「〜するのは嫌だ」ここでは「負けるのは嫌だ」
hate to ~は「〜するのを嫌う、〜したくないのだが」
ex) I hate to tell you, but~ 「言いたくはないんだけど〜」のように使います
hateの後に動詞が来る場合、to 不定詞でも動名詞でもほぼ同じ意味なので置き換え可能です。

勝つために戦っているとミスしてしまうことも。ヒットを打ちたくてボール球に手を出すよりも、フォアボールを選んで塁に出た方が得点につながる可能性が高まります。 
負けないようにプレーしていると、自然と勝利につながるという理論です。 

最後に 

事実にもとづいた作品ではありますが、トレードの時期など実際とは違う部分も。登場人物のキャラクターも脚色されています。 

大リーグの選手はみんな億単位の高い年俸をもらっているようなイメージですが、アスレチックスのように低予算で頑張っているチームもあるのです。 

選手のトレードが本人に相談もなく、チーム同士で決められてしまうのには驚きました。今からすぐに違う球団に行けと言われて、その日のうちに昨日までのチームメイトと敵として戦うようになることもある生活を送っている選手たち。球団がサポートしてくれるとはいえ、すぐに移籍後のチームのある土地に引っ越すのは相当なストレスだと思いますが、それもロマンの一つとも言えます。 

ビリーが空港にいるときに流れているテレビ画面には、イチロー選手が映し出されています。2000年の11月に3年で1400万ドルもの金額でマリナーズと契約したイチロー選手は、アスレチックスの予算では到底獲得する事ができません。日本ではイチロー選手の活躍ばかり報道されていて(私が気づかなかっただけなのか)アスレチックスの20連勝はこの映画を見て初めて知りました。スター選手がいても勝てないチームもある中、スター不在でもそれぞれの長所を生かして勝つのはやはりGMや監督の力が大きいと思います。 

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