マイレージ・マイライフ

作品紹介 

マイレージ・マイライフは2009年のアメリカ映画です。原題は「Up In The Air (上空にて)」。オープニングはアメリカ各地の上空からの映像で始まります。アカデミー賞作品賞を含む5部門にノミネート。 

主人公であるライアン・ビンガムの仕事は、様々な会社に出向いて社員の解雇を言い渡すことです。そのため出張が多く、1年のほとんどはホテル生活。旅慣れているのでキャリーケースの中は必要なものだけがキレイに整頓して収納され、無駄なものは持ち運びません。 

今持っている物や人間関係の重さをバックパックに入れることをイメージし、それらの荷物を出して楽になろうといった講演会も行っています。

ライアンの目標はマイレージを100万マイル貯めること。ホテルのバーでアレックスという女性に出会い、お互いいろんな場所への出張が多いので出張先が近い時にまた会う約束をします。 

職場には大学を卒業したばかりのナタリーが入社。彼女が出張の経費を削減するためにマニュアルにそってオンラインで解雇することを提案し、社に採用されます。納得できないライアンは上司に抗議し、ナタリーを連れて出張に行くことに。 

結婚して一つの場所に定住して家族と生活することに興味のなかったライアンですが、ナタリーの恋愛に関する考えに刺激を受け、次第にバックパックに荷物を入れたい(アレックスと真剣に付き合いたい)と思うようになります。ライアンは幸せな家族を築くことができるのでしょうか? 各地の上空からの映像もキレイな作品です。 


ハッピー・ザ・ベスト!::マイレージ、マイライフ [ ジョージ・クルーニー ]

監督・キャスト紹介 

監督

ジェイソン・リートマン(Jason Reitman)で、主な作品は2005年の映画「ジュノ」。 

キャスト

Ryan Bingham  ライアン・ビンガム役: George Clooney ジョージ・クルーニー 
主な作品は2002年「オーシャンズ11」 

Alex Goran  アレックス・ゴーラン役: Vera Farmiga ヴェラ・ファーミガ 
Natalie Keener  ナタリー・キーナー役:Anna Kendrick アナ・ケンドリック 

セリフ紹介 

Keep my world in orbit. 私の世界を軌道に乗せる

ライアンが空港への想いを語っているシーン。 

It’s these kinds of systemized friendly touches that keep my world in orbit. 
これら空港でのシステム化されたフレンドリーさが私の世界を軌道に乗せている 

All the things you probably hate about traveling, the recycled air, the artificial lighting, the digital juice dispensers, the cheap sushi, are warm reminders that I’m home.     
おそらく旅行でイヤだと思う全てのこと、機内の空気、人工的な照明、ドリンクバー、安い寿司、それら全てが家に帰ってきたと暖かく迎えてくれるのだ。   

systemized: 系統化された、システム化された 
friendly touch: 友好的な感じ(ここでのtouchはcambridge dictionaryでのa small addition or detail that makes something better 何かをよくするちょっとした付け足し、または詳細) 
keep~ in orbit: ~を軌道に乗せたままにする 
recycled air: リサイクルされた空気
(機内は空気のリサイクルでなく、上空の新しい空気を取り込んで入れ替えています。しかし中には空気を循環させている機体もあるのかもしれません。いずれにしても機内はとても乾燥するのでお肌の乾燥は気になるところ。) 
artificial: 人工的な 
digital juice dispenserはタッチパネルでジュースを選ぶドリンクバーです。 

最初の文は空港でチェックインやセキュリティー・チェックをするときの地上スタッフの対応のこと。 
家にいる時間よりも旅に出ている時間の方が長いライアンは、空港に来ると家に帰ったような気持ちになります。私にとって空港は、これから旅に出るぞ!と思ってテンションの上がる非日常の場所ですが。 

You’re awfully isolated the way you live.  恐ろしく孤立している

姉のカーラとの電話で 

Kara: You’re awfully isolated the way you live
カーラ:その生き方じゃおそろしく孤立してるわ 

Ryan: Isolated? I’m surrounded. 
ライアン:孤立?人に囲まれてるよ 

awfully: ひどく、とても 
isolated:孤立した 
surround: 囲む 

カーラは人と深く関わろうとしないライアンを心配しています。しかしライアンは物理的に周りに人がいるだけの現状に満足していて、孤独だとは思っていません。 

There is a methodology to what I do. メソッドがある

出張して対面で話をせずに、オンラインで仕事をすることに反発するライアンのセリフ① 

There is a methodology to what I do. There is a reason why it works.
私のやり方にはメソッドがある  うまく行くのには理由があるんだ 

methodology: 方法、方法論 
自分が解雇されるとはみんな思いたくないものです。ライアンには、それを受け入れてもらうための長年のやり方があるようです。 

There is a dignity to the way I do it.  相手を尊重している 

出張して対面で話をせずにオンラインで仕事をすることに反発するライアンのセリフ② 

What we do here is brutal, and it does leave people devastated. But there is a dignity to the way I do it. 
私たちの仕事は残酷だ。解雇された人々は打ちひしがれる。 でものやり方は相手を尊重している 

brutal: 残忍な、ひどい 
devastate: 打ちのめす 
dignity: 威厳、尊厳 

I just don’t want to settle. 妥協したくない

彼氏に振られたナタリーがアレックスに相談するシーン 

Natalie: I don’t mind being married to my career, and I don’t expect it to hold me in bed as I fall asleep. I just don’t want to settle
ナタリー:仕事と結婚してもいいし、眠りにつくときにベッドで抱きしめてもらうつもりもない。ただ妥協はしたくないの。 

Alex: You’re young. Right now you see settling as some sort of a failure. 
アレックス:若いわね。今は妥協が失敗みたいに思えるの。 

Natalie: It is, by definition. 
ナタリー:それが定義よ。 

Alex: Yeah. But by the time someone is right for you, it won’t feel like settling. And the only person left to judge you will be the 23-year-old girl with a target on your back. 
アレックス:そうね。でもいい人が現れる頃には妥協とは感じられなくなるものよ。そのとき批判するのは標的になった23歳の自分だけよ。 

settle:妥協する、和解する 
failure:失敗 
definition:定義 
by the time~: 〜の頃には 
judge: 批判する 
with a target on your back: 標的になる(背中に的が貼ってあるイメージです) 

若いと妥協できない気持ちも分かります。しかし結婚相手はスペックでなく自分が好きな相手かどうかで選ぶものです。理想の職業や趣味を持っている人でなくても、自分に合う人が見つかれば十分です。それが難しいとも言えますが… 

I needed to empty the backpack before I knew〜 〜と分かるまでバックパックを空にしておく必要があった

アレックスとライアンが船に乗って会話するシーンです。アレックスはライアンがバックパックをテーマにした講演をしていることをGoogleで調べていました。

Alex: Is the bag empty because you hate people or because you hate the baggage that they come along with? 
アレックス:人が嫌いだからバッグを空にするのか、人がついてくるからバッグが嫌いなのか。 

Ryan: I don’t hate people. I’m not exactly a hermit
ライアン:人は嫌ってない。世捨て人ってわけじゃないんだ。 

Alex: You just don’t want to be tied down with the whole responsibility thing? 
アレックス:ただ責任ってやつに縛られたくないだけ? 

Ryan: I don’t know what originally sparkled the backpack. Probably needed to be alone. Recently, I’ve been thinking that I needed to empty the backpack before I knew what to put back in it. 
ライアン:元々は何でバックパックのことをひらめいたのか分からないんだ。多分1人になる必要があったのかな。最近になって思うんだけど、バックパックを空にしておく必要があったんだ。何を戻し入れるかわかるまで。 

hermit: 世捨て人 
responsibility: 責任 
sparkle: ひらめく、きらめく 

バックパックには本当に大切なもの・人だけを入れるために、まずは空にしておく必要があったということです。今バックパックにたくさんの荷物がある人も、本当に必要なものは少しだけかもしれません。私は最近?というかここ10年ぐらいはあまり物欲がなく(食欲はありますが)、片付けが苦手なのでなるべく物を増やしたくないこともあり、新しいものはほとんど買わない生活です。ミニマリストの生活とかを雑誌で見ていいなと思うのですが、古いものがなかなか捨てられないので、ミニマムにはならず… 

Natalie: It’s a cocoon of self-banishment. 殻に閉じこもっている

アレックスとライアンはカジュアルな恋愛関係を続けています。新入社員のナタリーは、それではアレックスが可哀想だと思い、付き合い方を見直すようにライアンに言います。 

Natalie: Don’t you think it’s worth giving her a chance? 
ナタリー:彼女にチャンスをあげようと思わないの? 

Ryan: A chance for what? 
ライアン:チャンスって何の? 

Natalie: A chance at something real. 
ナタリー:何か本物へのチャンスよ 

Ryan: Natalie, your definition of real is going to evolve as you get older. 
ライアン:ナタリー、本物の定義は年をとるにつれて進化するんだ。 

Natalie: Can you stop condescending for one second or is that one of the principles of your bullshit philosophy? 
ナタリー:ちょっとでいいから威張らないでよ。それともそれもバカな主義の1つなの? 

Ryan: Bullshit philosophy? 
ライアン:バカな主義? 

Natalie: The isolation, the traveling. Is that supposed to be charming? 
ナタリー:孤独、旅。かっこいいと思ってるの?  

Ryan: No, it’s simply a life choice. 
ライアン:いや、単なる選択だよ。 

Natalie: It’s a cocoon of self-banishment. 
ナタリー:殻に閉じこもってるだけでしょ。 

worth ~ing: 〜する価値がある 
evolve:進化する 
condescend: 偉ぶる、いばって〜する 
principle:原理、主義 
bullshit: バカな、たわごと 
philosophy: 哲学、見解 
isolation: 隔離、孤独 
charming: 魅力的な 
cocoon:繭 
banishment: 追放、流刑 

ナタリーは結婚を夢見ていて早くしたくても、アレックスがライアンとの将来を考えているかどうかは分からないのですが… 
cocoon of self-banishment「自分を追放して繭の中に閉じ込める」→「殻に閉じこもっているだけ」

run the gauntlet とは?

ライアンの人間関係についてのナタリーのセリフ 

You have set up a way of life that basically makes it impossible for you to have any kind of human connection.  
どんな人間関係も基本的に不可能にする人生を築いたのよ。 

And now this woman comes along and somehow runs the gauntlet of your ridiculous life choice and comes out on the other end smiling just so you can call her “casual”? 
そして今この女性が来て、どういうわけかあなたのバカな人生の選択に付き合おうとして、向こう側で笑ってくれているのは、あなたが”気楽な関係”っていうためにってこと? 

run the gauntlet:あなたを批判したり攻撃したりする多くの人と関わらなければならないこと (cambridge dictionaryでは「to have to deal with a lot of people who are criticizing or attacking you」です) 

I want a “plus one”.  連れが欲しい

アレックスを妹の結婚式に誘うライアンのセリフ 

Look, I’m not the wedding type, right?  But for the first time in my life, I don’t want to be that guy alone at a bar. I want a dance partner. I want a “plus one”. And if you can stomach it, I’d like it to be you. 
結婚式って柄じゃないだろ?でも生まれて初めて、バーに1人でいる男になりたくないんだ。ダンスの相手が欲しい。”一緒にいてくれる人”が。だからもし受け入れてくれるなら、君に来てほしいんだ。 

plus one: パーティーなどで招待状に1人連れてきてもいいと書いてあった場合に連れて行く人 
stomach:(困難なことを)うけいれる 

人との関わりに関心がなかったライアンが変わり始めます。素敵なセリフなので、こんな風に誘われたら 誰でも行きたくなるのではないかと思います。

Everybody needs a co-pilot. みんな副操縦士が必要だ

妹の結婚相手のビルが式の直前になって迷い始め、ライアンが話をするシーン 

Ryan: If you think about it, your favorite memories, the most important moments in your life, were you alone? 
ライアン:考えてみてくれ。思い出に残っているとき、人生で最も大切な瞬間、その時は1人だったか? 

Bill: No, I guess not. 
ビル:いや、違うと思う。 

Ryan: Hey, come to think of it, last night, the night before your wedding, when all this shit is swirling around in your head, weren’t you guys sleeping in separate bedrooms? 
ライアン:考えてみたら昨日の夜、結婚式の前夜に悩んでいた時は、2人は別々に寝ていたんじゃないか? 

Bill: Yeah, Julie went back to the apartment and I was just by myself in the honeymoon suite. 
ビル:ああ、ジュリーはアパートに帰って僕は1人でハネムーンスイートにいた。 

Ryan: Kind of lonely, huh? 
ライアン:寂しかっただろ? 

Bill: Yes, it was pretty lonely. 
ビル:そうだな。かなり寂しかった。 

Ryan: Life’s better with company. 
ライアン:人生には仲間がいた方がいい 

Bill: Yeah. 
ビル:ああ 

Ryan: Everybody needs a co-pilot. 
ライアン:誰にでも副操縦士が必要なんだ 

shit:クソ、嫌なこと 
swirl:渦巻く 
separete: 別れた、別々の 
co-pilot:副操縦士 

ビルは結婚式の直前になって、結婚して家族と生きても結局死ぬだけだから「What’s the point?(なんの意味があるんだ?)」と思って悩み始めます。結婚しなくてもみんな最後は死ぬので、その時に誰かと共有した楽しい思い出が一つでも多い人生にしたいと思います。 
ライアン自身もビルを説得しているうちに、1人で寂しい(副操縦士がほしい)と思い始めているような気がします。 

まとめ 

解雇を言い渡す仕事はとてもストレスが溜まると思いますが、ライアンは各地を飛び回ってホテル生活ができる仕事に満足していたようです。仕事だし、もう2度と会うことはない人だと思えば割り切れるのかもしれません。いろいろな場所に行ける仕事は魅力的で荷物を持たない気軽な生活は楽ですが、やっぱり私だったら1人では楽しくないと思います。 

人生の荷物は、物であっても人間関係であっても増えると面倒くさいこともありますが、幸せは人との関わりから生じるもの。ライアンのセリフにある「Everybody needs a co-pilot.」のように人には幸せを分かち合う人が必要だなと思える作品です。 

ジョージ・クルーニーの英語は比較的聞き取りやすく、難しい単語もほとんど出ないので分かりやすいと思います。最後に予告編をどうぞ!

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