The Shape of Water

姿・形は見えなくても、いたるところにあなたを感じる。

作品紹介 

The Shape of Waterは2017年のアメリカ映画で、同年のアカデミー作品賞を受賞したファンタジー系の恋愛映画です。時はアメリカとソ連が冷戦を繰り広げている最中の1962年、首都ワシントンから66kmの位置にあるボルティモアが舞台となっています。 

主人公の女性イライザは口がきけず、仕事は厳重に警備された研究所での夜間清掃員。映画館の上のアパートで暮らし、隣人で絵描きのギルズとは仲のいい友人です。 

毎日同じ時間に起きてゆで卵とサンドイッチを作り、バスで通勤するといった決まりきった生活を送っています。 

しかしそんな単調な毎日の中である日、イライザの働く研究所に南アフリカから半魚人のような姿の謎の生き物が運ばれてきます。水の中で暮らす「彼」との交流によって、イライザの生活に変化が訪れることに。

大佐の指を噛みちぎるといった凶暴な面もある「彼」を怖がらずに興味を持ち、ゆで卵をあげたり音楽を聴かせたりして交流を深めていくイライザ。 

イライザの働く研究所では未知の生き物を解剖し情報を独占することで、ソ連よりも優位に立とうとしています。対するソ連も研究所にスパイを送り込んでいて、アメリカに半魚人の情報を渡さないために半魚人を殺そうとしています。

ほうっておけずに「彼」を守ろうとするイライザと「彼」の行く末は・・・。 

監督・キャスト紹介 

監督:Guillermo del Toro (ギレルモ・デル・トロ) 

   この作品でアカデミー監督賞を受賞。主な作品は2013年の「Pacific Rim」です。 

脚本:Guillermo del Toro (ギレルモ・デル・トロ), Vanessa Taylor (バネッサ・テイラー) 

キャスト 

The Shape of Waterのキャストから3人、アカデミー賞にノミネートされました。 

まず主演のElisa Esposito(イライザ・エスポジート)を演じたSally Hawkins(サリー・ホーキンス)。この作品で主演女優賞に、2013年にはウディ・アレン監督作品「Blue Jasmine」でもアカデミー助演女優賞にノミネートされています。 

イライザの隣人役であるGiles(ギルズ)を演じたRichard Jenkins(リチャード・ジェンキンス)は、助演男優賞。  

イライザの同僚、Zelda Delilah(ゼルダ・デライラ)を演じたOctabia Spencerは、助演女優賞にノミネート。主な作品は2016年の「Hidden Figures(ドリーム)」などです。  

他には合衆国大佐であるRichard Strickland(リチャード・ストリックランド)を、Michael Shannon(マイケル・シャノン)。 

研究者でありロシアのスパイのRobert Hofftetler /Dimitri Mosenkovh(リチャード・ホフステッドラー/ディミトリ・モセンコフ)はMichael Stuhilbarg(マイケル・スタールバーグ)が演じています。 

セリフ紹介 

イライザが隣人のギルズに、サンドイッチとゆで卵を持っていくシーン。 

Giles: I’d waste away to nothing without you looking after me. I am the proverbial starving artist am I not?

ギルズ:君が面倒を見てくれなかったらやせ細ってしまうだろうよ。
私は飢えた芸術家で有名だろ? 

waste away: やせ細る 

proverbial: 有名な 

waste awayで不健康にやせて弱っていくという意味があるとは知りませんでした。ポイ捨てするようなイメージを持ってしまいそうですが、自分の健康を無駄にするというところから来ているのだと思います。そして「to nothing 」が続き「何も無くなるまで」ということは、「骨と皮になるまで」といった感じですね。 

イライザが出社するシーン

ギリギリに職場に着くと、タイムカードの機械には長蛇の列。しかし同僚のゼルダが並んでいる場所に入れてもらい、遅刻せずにすみます。それに対して後ろに並んでいたヨランダは・・・ 

Yolanda:Hey! What do you doing? 
ヨランダ:ちょっと!何やってんのよ。   

Zelda: Leave her alone, woman. I was keeping her place. 
ゼルダ:ほっといてよね。私が入れてあげたんだから。

Yolanda: I get reported. I come after you and the mute… 
ヨランダ:言いつけてやる。あんたもしゃべれないそいつもタダじゃおかないから。

Zelda: You do that, Yolanda. You do that. 
ゼルダ:どうぞご自由に。好きにしたら。

ポイント:keep her placeで「彼女の場所をキープする」という意味です。とはいっても、列の順番はとっておいてあげられるようなものではないので「入れてあげた」にしました。 

I get reported.はget とreportedの間に「it(your behavior)」(ズルこみさせたこと)が省略されているものと思います。muteは「口の聞けない人」の意味で、テレビなどを消音にするのもmuteです。 

ゼルダは脅されても全く気にしていないところがかっこいいなと思います。実生活ではなかなか言えないようなセリフですが、その分見るとスッキリします。 

イライザとゼルダが掃除している研究所に謎の生き物が運ばれてくるシーン。 

Fleming: I don’t want to bolster-or overstate the matter but this maybe the most sensitive asset ever to be housed in this facility. 
フレミング:自信があるわけでも大げさに言いたいわけでもないんだが、これは今までこの研究所に収容された中で1番貴重な生き物かもしれないんだ。 

bolster:(士気などを)高める、(自信など)を増す・強める 

overstate:〜を大げさに言う、実際よりよく見せる 

sensitive:機密の、繊細な 

asset:貴重な物(人) 

house:(人)を収容する、(物)をしまう・入れる 

「the」が「ジ」と読まれています。ただの最上級でなく「まさにその」と言った意味合いです。ドラマ「フレンズ」でモニカが気に入ったウェディングドレスを見つけたときに「the(ジ) dress」と言っていたのを思い出しました。

「 house」は犬に小屋へ戻るようにいう時にも使います。

日本語では「まさにその」と言った意味合いで「the(ザ)」をつけたくなります。しかし、それだとあまり強調できていないのです。 

イライザとゼルダが掃除しているトイレにストリックランドが入ってくるシーン。 

Strickland: Man washes his hands before or after tending to his needs.
ストリックランド:手を洗うのがトイレの前か後かが、その男に必要なものだ。

That tells you a lot about that man.
どっちなのかがその男について多くを語ることになる。

He does it both times?
両方洗うやつは?

Points to a weakness of character… 
弱さの表れだな。 

tend to:(〜に)結果的につながる 

one’s needs:必要(なもの) 

「tending to his needs」で「彼に必要なものにつながる→その男に必要なものだ」

points to:(〜の)傾向を示す、暗示する  

「Points to a weakness of character.」を直訳すると「性格の弱さを暗示する」です。

ストリックランドは用を足す前だけ手を洗って、後は洗いませんでした。両方洗うのは大変ですが、後には洗ってほしいものです。米国人男性でも日本人男性でもトイレの後で手を洗わない人がいるようです。女性用トイレでは、手を洗わないで出ていく人は見たことがないですが・・。 

Pie Guy:Oh, I’ve seen you in here before, right? 
店員:前にも来られましたよね? 

Giles: Oh, well –I –yes- I’ve been here. A couple of times as a matter of fact. 
ギルズ:いや、ああ、来たよ。2〜3回ぐらいかな。

Pie Guy: Partial to key lime pie? 
店員:キーライムパイ好きですね。

Giles: A craving I indulge in. It cannot possibly be good for me. Nothing I like is… 
ギルズ:いくら食べても足りないくらいだ。体に良いはずはないのだが。好物はみんな…

Pie Guy: Oh, no- It’s a mighty fine pie, key lime. 
店員:そりゃぁ。大きなキーライムパイですからね。

Giles: And the color is so vivid!  
ギルズ:それに色も鮮やかだ! 

イライザとギルズが朝食を食べにいくシーン 

as a matter of fact:実際、実のところ 

partial:(〜が)とても好きな 

craving:切望、渇望 

indulge:(欲望に任せて)好きなだけ〜する 

mighty:巨大な 

fine:上質な 

最初の文は、直訳すると「前にもこの店で見かけましたけど、合っていますか?」ですが「前にも来られましたよね」にしました。「as a matter of fact」は訳すほどではなく、まあ1回ではないけどぐらいの意味だと思います。 

Nothing I like is…のあとは「not good for me」が省略されています。体に悪いものばかりが好きだということですね。 

キーライムパイは日本ではあまり馴染みがありませんが、アメリカでは有名なお菓子です。キーライムは、普通のライムよりも小さく見た目はカボスのようです。パイがとても鮮やかな緑色をしているのは着色料。天然果汁だけではそんなに鮮やかな色が出るはずがないので…。カボスやゆずもパイにしてみたらおいしいのかもしれません 。

ゼルダとイライザがストリックランドに呼び出されたシーン。 

Strick Land: It was you that found my finger. 
ストリックランド:君が指を見つけてくれたんだってね。

「you」を強調する強調構文になっています。「It is 〜that節」の形で覚えておくと、応用できますよ。 

例文:It was me that found your wallet. あなたの財布を見つけたのは私です。

半魚人をホイトに見せるシーン。  

Hoffstetler: You want to put a man in space.
ホフステットラー:人類を宇宙に送りたいんですよね。

He’s gonna have to endure conditions the human body just wasn’t made for.
彼は人間に適さない環境にも耐えなければならなくなるでしょう。

This gives us an edge against the Soviets. 
ソ連に勝てる要素になります。

Hoyt: How long can it breathe outside the water? 
ホイト:水上ではどのくらい息が持つんだ?

Strickland: Reality, is, Sir- We don’t know jackshit about this thing- 
ストリックランド:実を言うと、こいつのことは全く分かってないんです。

endure:~に耐える 

edge:強み、有利 

jackshit:全く、無価値のもの 

ホフステットラーは謎の生き物のことを「he」と呼んでいますが、ホイトとストリックランドはそれぞれ「it」、「this thing」と呼んでいて物扱いしています。 

ホフステットラーは、半魚人を殺してはならないとホイトに訴えますが… 

Hoyt: Count these stars with me son- there’s five of them.
ホイト:星の数を数えてみろ。5つだ。

That means I can do whatever the hell I want.
と言うことは、私はしたいことがなんでもできるんだ。

You wanna plead your case?
「それ」を守りたいのか?

I’ll listen to it.
意見は聞いてやる。

But, at the end of the day, it is my damn decision. 
だが最終決定権は私にある。

the hell: 一体全体 

「What the hell?」だと「一体何?」 

「What the hell are you doing?」だと「一体何やってんだ?」といった意味になりますが、 

「whatever the hell I want」で「私がしたい事は何でもかんでも」といった感じです。 

plead:弁護する、主張する 

case:事例 

at the end of the day:最終的には 

damn:ひどく、全く(次の単語のdecisionを強調しています) 

解剖されそうになっている半魚人を逃してあげたいと、イライザがギルズに相談するシーン。

ギルズがちゃんと手話を見てくれないので、手話で伝えていることを口に出すよう頼みます。 

彼を救うか、死なせるか

Giles: OK, OK, calm down- I’ll repeat it – to you.
ギルズ:分かった。分かったから落ち着いて。繰り返すよ。

Elisa:”What am I? I move my mouth like him-I make no sound- like him.
イライザ:「私は何?彼のように口を動かすけど、声は出さない。彼と同じよ。

What does that make me? 
だったら私は何者なの?

All that I am, all that I’ve ever been brought me here– to him.”
私のすべて、今までの全てがここに導いたの。彼に。」

Giles: See, you are saying “him.” It’s a “him” now? 
ギルズ:ほら「彼に」と言っているぞ。「彼」と呼ぶことにしたのか?

Elisa: “The way he looks at me.
イライザ:「彼の視線は…

He doesn’t know what I lack… Or how I am incomplete.
彼には私の障害がわからないの。っていうか、どんな障害があるのかも。

He sees me for what I am. As I am.
ただ私自身を見てくれる。 

He’s happy to see me, every time. Every day.” 
彼は私と会うといつも幸せになるの。毎日ね。」

“Now, I can either save him or let him die.
「だから私は彼を救うのか見捨てるのか。

Never see his eyes see me again.
2度と彼に見てもらえないなんて。

I will not let that go…” 
そうはしたくないの…」 

 calm down: 落ち着いて 

see: ほら 

ポイント:誰かの悩みを聞いたりしているときに「I’ve  been there.」と言うと「私もかつては同じことで悩んでいた(その場所にいた)」と言った意味です。ここでは、今までのことが全て今彼と会えたことに繋がっているということでしょう。 

この会話の前でイライザは、半魚人のことを「it」と呼んでギルズにもの扱いしていると言われています。ここで「彼」に変わりました。 

イライザは口が聞けないと言うことを特別と思わずに接してくれる「彼」への想いを述べています。会えるだけで喜んでくれる人を失いたくないと言う気持ちです。 

Neverで始まる文は「もしそんなことになったら」という意味合いで言っていることが分かります。 

半魚人が連れ去られた件でホイトから研究所のストリックランドに電話がかかってきたシーン。 

Hoyt: That thing was our space dog, Strickland. You know that-  
ホイト:あれは我が国の宇宙犬だったんだよ、ストリックランド。分かるだろ。 

Strickland: Sir, I’m getting it back- I don’t… I can’t be in a negative frame of mind, Sir. 
ストリックランド:取り戻してみせます。悲観的になるわけにはいかないんです。 

Hoyt: So, you’re feeling good? 
ホイト:じゃあ落ち込んでいないんだな。 

Strickland: Feeling strong. Getting it back. 
ストリックランド:もちろんです。取り戻します。 

Hoyt: You can get it done. You’re gonna get it done. For me, son. For me. 
ホイト:君ならできる。頼んだよ。私のためにな。 

宇宙開発において、ソ連はアメリカに先駆けて1950年代から60年代に宇宙に犬を送っていました。あめりかは未知の生物を解剖することで、ソ連の持っていない情報を得て宇宙開発に繋げようとしていたのだと思います。 

最後に紹介される詩 

“Unable to perceive the shape of you, I find you all around me.
「姿・形は見えなくても、いたるところにあなたを感じる。

Your presence fills my eyes with your love.
あなたの存在が私の目をあなたの愛で満たす。

It humbles my heart, for you are everywhere.” 
それによってわたしの心は謙虚になる。いたる所にあなたがいるから。」 

perceive:〜を知覚する 

presence:存在 

humble:〜を謙虚にする

ギレルモ・デル・トロ監督がイスラム語で書かれたこの詩を気に入ったので、最後のシーンに採用されました。神について書かれた詩です。 

最後に

冒頭のアパートが水中にあるようなシーンから、ファンタジーの世界に引き込まれます。 

主人公のイライザは、変化のない生活の中でも友人とテレビに合わせてタップダンスをしたりするなどして、楽しみを見つけています。仕事に行く時はベレー帽をかぶりスカーフを巻いたファッションで、地味なようで可愛いです。バスに乗る時はベレー帽の中にスカーフを丸めて入れて窓にくっつけ、枕がわりにしているのがキュート。わたしもバス通勤なので、この作品を見てからしばらくは窓に頭をくっつけてみたくなりました。ベレー帽もスカーフもなく冬は冷たいのでやめましたが、イライザになったつもりで想像だけしても結構ひたれます。 

人間と半魚人との恋愛は現実にはありえないながらも、現実に通じるところがあっておすすめです。 

最後に予告編をどうぞ

コメント