JOKER

作品紹介 

ジョーカーは2019年のアメリカ映画で、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞しました。

アカデミー賞では作品賞・監督賞・脚色賞など11部門にノミネートされ、ジョーカーを演じたホアキン・フェニックスは主演男優賞を受賞。 

バットマン・シリーズの悪役として知られているジョーカーですが、この作品では主役に。 

アーサー・フレックという名前の男性が、ジョーカーと名乗るようになる経緯が明らかになりますが、これまでのバットマン映画やコミックスの内容と合わない部分も。 

アーサーは母親のペニーと二人暮らし。ゴッサム・シティではゴミ収集人のストライキが起こり、犯罪や失業率の高さが問題に。

ゴミ収集人のストライキが起こり犯罪や失業率の高さが問題になっているゴッサム・シティで、母親のペニーと2人暮らしのアーサー。精神的な障害で笑いが止められない症状があるため、自身の症状を説明するために見せるカードを持ち歩いています。仕事はピエロの格好をする芸人でしたが、クビになってしまいだんだんと悪の道へ入っていくことに。街の人たちは格差社会への不満からエリートを殺したジョーカーを英雄視。デモや暴動が起こり始めます。そんな中、憧れの司会者マレー・フランクリンのショーにアーサーのゲスト出演が決定。ゴッサム・シティはどうなるのか? 

監督・脚本・キャスト紹介 

監督・脚本 トッド・フィリックス

主な作品…「ハング・オーバー」シリーズの監督・脚本。 

キャスト 

ホアキン・フェニックス (Joaquin Phoenix)

アーサー・フレック/ジョーカー(Arther Fleck/ Joker)を演じたホアキン・フェニックスは、この作品でアカデミー賞・主演男優賞を受賞。

過去に2回主演男優賞、1回助演男優賞にノミネートされましたが、受賞は初めて。 

主な作品は主演男優賞にノミネートされた2005年の「Walk the Line」など。 

ロバート・デ・ニーロ(Robert De Niro)

アーサー(ジョーカー)の憧れの司会者、マレー・フランクリン(Murray Franklyn)役。

1974年の「ゴッド・ファーザーⅡ」や1976年の「Taxi Driver」でも有名な俳優で、さすがの存在感です。

アーサーとソーシャルワーカーが面談するシーン①

Social worker: Arther, you’re on seven different medications

ソーシャルワーカー:アーサー、7種類もの薬を飲んでいるのよ。

Surely they must be doing something. 

何かしら効果はあるはずよ。 

Arther: I just don’t wanna feel so bad anymore. 

アーサー:ただもう嫌な思いはしたくないんだ 

on medicationで「薬物治療を受けて」 という意味になります。処方箋を書いてもらって薬を飲んでいるという表現で、いつも飲んでいる薬がある場合は使えそうです。 

surely: きっと 

テレビ番組「Good Morning」にトーマス・ウェインが出演するシーン 

Host: There now seems to be a groundswell of anti-rich sentiment in the city. 

司会者:街では今、反金持ちの感情が高まっているようですね。 

It’s almost as if our less fortunate residents have taken the side of the killer. 

まるで恵まれない住人たちが殺人犯の味方をしているようです。 

Wayne: Yes, and it’s a shame.  

ウェイン:ああ 残念だ。 

It’s one of the reasons why I’m considering a run for mayor.  

だから市長選に立候補しようと考えているとも言える。 

Gotham has lost it’s way

ゴッサムは迷走している。 

Host: What about the eyewitness report of the suspect being a man in a clown mask? 

司会者:犯人はピエロのマスクをしていたという目撃者の証言については? 

Wayne: It makes a total sense to me.  

ウェイン:私には非常に理にかなっていると思える。 

What kind of coward would do something that cold-blooded?  

どんな負け犬があんな冷酷なことをするんだ? 

Someone who hides behind a mask.  

お面の下に隠れた人。 

Someone who’s envious of those more fortunate than themselves, yet too scared to show their own face. 

自分よりも恵まれた人に嫉妬しながらも、自分の顔を見せるのが怖い人だよ。 

映画「JOKER」より

groundswell: 急速な高まり、盛り上がり 

anti-rich sentiment: 反金持ちの感情、心情 

almost as if〜: まるで〜のように 

less fortunate resident: 恵まれない住人 

take the side of〜:〜の味方をする 

one of the reason why~: 〜する理由の一つ 

consider:考える 

run for mayor:市長選に出馬する 

It’s one of the reason why I’m considering a run for mayor.の文は直訳すると、 

「それは市長選に出馬することを考える理由の一つだ。」ですがここでは→ 

「だから市長選に立候補しようかと考えているとも言える。」としました。 

eyewitness:目撃者  

clown:ピエロ 

make sense:理にかなう 間に「a total」を挟むことで強調しています。 

coward: 負け犬 

cold-blooded:冷血の、冷酷な 

hide behind~:〜の後ろ(下)に隠れる 

envious:嫉妬深い 

トーマス・ウェインはピエロの格好をした殺人犯(アーサー)のことを痛烈に批判しています。

アーサーとソーシャルワーカーが面談するシーン② アーサーのセリフ

You don’t listen, do you?

聞いてないよな?

You just ask the same questions every week.  

ただ毎週同じ質問をするだけだ。 

”How’s your job? ” 

「仕事はどう?」 

”Are you having any negative thoughts? ” 

「悲観的になってない?」 

All I have are negative thoughts. 

悲観的なことしか考えてないよ。 

For my whole life, I didn’t know if I even really existed.  

これまでずっと、自分が存在しているのかすら分からなかった。 

But I do, and people are starting to notice. 

でもいるんだ。みんなもそのことに気づき始めている。 

映画「JOKER」より

negative: 悲観的な、消極的な、マイナスの 

exist: 存在する 

notice:気づく 

アーサーは仕事をクビになり同僚にも冷たくされて、いつもないがしろにされる人生を送ってきました。しかしエリート会社員を3人殺害した犯人がピエロの格好をしていたことが街中に知れ渡り、自分の存在が受け入れられていると感じています。

入院中のアーサーの母、ペニーを見舞うアーサーのセリフ

Penny Fleck. I always hated that name.  

ペニー・フレック。この名前がずっと嫌いだった。 

Remember you used to tell me that my laugh was a condition, that there was something wrong with me? 

笑うのは病気で、どこかが悪いからだってよく言ってたの覚えてる? 

It isn’t. 

そうじゃないんだ。 

That’s the real me. 

これが本当の俺だ。 

Penny: Oh, Happy. 

ペニー:ハッピー。 

Arther: Happy. I haven’t been happy one day out of my entire fucking life. 

アーサー:ハッピー。これまでのクソ人生の中で1日たりともハッピーな日などなかったよ。 

You know what’s funny? 

何が面白いかって? 

You know what really makes me laugh? 

本当に笑えるのは… 

I used to think that my life was a tragedy

俺の人生は悲劇だと思っていたんだ。 

But now I realize, it’s a fucking comedy

でも今わかった。クソ喜劇だってね。 

condition:病気  

make me laugh:私を笑わせる  

tragedy:悲劇 

comedy:喜劇 

Fワード(fuck)は映画やドラマなどではたびたび聞かれますが、実際の会話では強すぎる言葉なので使わない方がいいでしょう。 

アーサーは自分がトーマス・ウェインの息子だと母に聞いた後で、息子ではないと分かり自暴自棄になっているようです。しかし劇中ではペニーもアーサーも妄想が激しく、何が本当だか分からない気もします。 

アーサーが憧れの司会者マレーの番組に出演したシーン①

アーサーはマレーに”ジョーカー”と紹介してもらいます。 

Joker: Have you seen what it’s like out there, Murray? 

アーサー:外の世界がどんなだか見たことあるのか、マレー? 

Do you ever actually leave the studio? 

このスタジオから出たことないだろ。 

Everybody just yells and screams at each other. 

みんながお互いにただ怒鳴りあっているんだ。 

Nobody’s civil anymore! 

親切な人なんかいない。 

Nobody thinks what it’s like to be the other guy. 

誰も他の人になったらどんなだかなんて考えない。 

You think men like Thomas Wayne ever think what it’s like to be someone like me? 

トーマス・ウェインのような人間は、俺みたいな人間になったらどんな生活かなんて考えたこともないと思うだろ。 

To be somebody but themselves? 

自分じゃない誰かになったらって? 

They don’t. 

ありえない。 

They think that we’ll just sit down and take it like good little boys ! 

あいつらは俺たちなんてただ座っていい子に受け入れると思っていやがる。 

That we won’t werewolf and go wild

俺たちが狼になって騒ぐはずないだろうって。 

2番目の文「Do you ever actually leave the studio?」は直訳の「このスタジオから実際に離れたことはあるのか?」を「出たことないだろ」としました。 

civil: 礼儀正しい、親切な 

what it’s like to be~: 〜になったらどうなのか 

werewolf: 狼人間 

go wild: 乱暴になる、夢中になる 

マレーはいつもスタジオの中で仕事をしていて、世間がどうなっているのか分かっていないとジョーカーは思っています。

アーサー(ジョーカー)が憧れの司会者マレーの番組に出演したシーン② 

ジョーカーは地下鉄でエリート3人を殺した犯人は自分だと告白。

Murray: And why should we believe you? 

マレー:それでなぜ君を信じるべきだと? 

Joker: I’ve got nothing left to lose. 

アーサー:俺には失うものなど何もないからさ。 

Nothing can hurt me anymore

もう何があっても傷つかない。 

My life is nothing but a comedy

俺の人生は喜劇にすぎないんだ。 

Murray: Let me get this straight, you think that killing those guys is funny? 

マレー:要するに、彼らを殺したのが面白いと? 

Joker: I do. And I’m tired of pretending it’s not. 

アーサー:そう。それに…違うふりをするのには疲れたんだ。 

Comedy is subjective, Murray. 

喜劇は主観的なものだろ、マレー。 

アーサーは殺人も喜劇の一部としてとらえています。 

失うものもなく、何にも傷つかなくなった怖いものなしのジョーカーが誕生する場面です。 

まとめ 

ジョーカー役のホアキン・フェニックスはこの役のために、1日にりんご1個だけを食べる生活をして減量しました。劇中ではガリガリですがアカデミー賞の授賞式で主演男優賞を受け取るときには、すっかりもとの体型に。 

バットマンのストーリーを全く知らなくても楽しめます。私は昔ティムバートン監督のバットマンを観た事があるのですが、ほぼ覚えていなくてもストーリーにはついていけました。 

暗く重い内容で希望が持てるような要素はないけれど、これぞ映画といった面白さがあって引き込まれるので何回もみてしまう作品です。 

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